1920年代・日本展

 
 今橋先生の授業で、「1920年代・日本展 都市と造形のモンタージュ」(1988年・東京都美術館)という展覧会のカタログを見る機会があった。「モダン」という言葉で形容されることが多い大正時代の後半から昭和初期の、幅広い創作活動を取り上げた企画である。
 
 絵画においては、佐伯祐三らフランス・ドイツで学んだ画家の存在や、ヨーロッパの絵画を紹介する展覧会の開催、ロシア未来派の芸術家の来日などが刺激となったようだ。現在の我々から見ると朧げな理解に留まっていると言わざるを得ないものの、フォーヴィスムキュビズムダダイスムなどの流れを汲む前衛的な作風の作品が見られるようになっている。
 
 演劇では、1924年に完成した築地小劇場(1945年焼失)で小山内薫が活躍している。また、表参道ヒルズ建設で取り壊された同潤会アパートが設計・建築されたのもこの時期である。
 
 私が特に気になったのは、白黒写真を撮る野島康三の作品群。ピクトレアリスム故の粗い粒子と、強調されたコントラストで浮かび上がってくる白い女性の肌は、何ともいえない迫力を漂わせている。キレイ、というより、生々しい。