私の副流煙を吸って
元クラスメイトのはらしゅん・M嬢と三人で、王子の小さな舞台で行われた演劇公演を観に行った。フリーター(というよりはニート)の青年を主人公としていて、彼の周囲に起こる出来事を描きながら、様々な人物の心理をスケッチしていくようなものだった。この演出家の手掛けた舞台を以前にも観たことがあるのだけど、舞台上の空気や観賞後の印象などは、そのときに通じるものがあった。少し重たい空気、次々と断片的な状態で投げかけられるテーマ、ヒステリックなシーン…。
自分が高校演劇をやっていたときにも感じていたけれど、学生演劇は小さな世界に閉じこもってしまう傾向にあると思う。一つには、各団体が小規模である上、あまりシステム化・マニュアル化のできない分野であるために、ひとりひとりの費やす時間やエネルギーが大きくて、皆、目の前のものしか見えなくなってしまうから、ということが言える。そして、もう一つには、公演の観客が、同じような学生演劇の関係者や、その友達や家族に限られてしまうことが影響しているのだろう。
だから、意識していないと、すぐに内輪受けに陥って、クオリティが下がってしまう。例えば、演じている役者の普段の姿を知っているからこそ面白く見える「笑い」で自己満足に浸っている劇も多い。もし次回作に活かす反省をしようとするのなら、観る側が、本当に意味のある批評・論議をしなければいけない。でも、付き合いで観に来ている観客にとって、その覚悟を引き受けるのは難しい。
中村うさぎ
- 作者: 中村うさぎ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/03/16
- メディア: 単行本
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まだ読んだ訳ではないのだけど、日経ビジネスAssocieに掲載されていた著者のインタビューを読んで気になっている一冊。
買い物依存症・ホスト依存症・豊胸手術などで知られる中村うさぎさん。キワモノ扱いされている印象が強いけれど、男女の関係や性的な問題についての価値観が、かなり私の価値観と近い気がしていて、以前から気になっている。(ただ、まだ著作そのものに手を着けられずにいる。インタビューなどさわりの部分だけでも、あまりに近い空気を感じるからこそ怖い。自分の内面に抱える「得体の知れない欲望のようなもの」が可視化されてしまうことへの漠然とした恐怖や、中村うさぎ的な女性としてある種のアイデンティティ枠を形成してしまうことへの抵抗があるんだろう。)
彼女のインタビューの中で、最も共感したのが「性的な意味での男女平等は難しい」ということ。「女は、好みのタイプではない「無理な相手」でもやろうと思えばできるし「そうしなければ殺される」という状況なら気持ちいいふりさえもできる。」という一文には、非常にうなずかされた。
女は圧倒的に弱い。それが故に身に着けていくしたたかさやたくましさがあるんだろう。それは、「哀しさ」と言い替えることもできるかもしれないけどね。
松岡美術館「エコール・ド・パリ展」
20世紀初頭のパリは、19世紀末の印象派の後を受けて、様々な前衛芸術が花開いていました。セーヌ左岸のモンパルナスでは、中心部ヴァヴァン交差点近くにカフェや共同アトリエが多く点在し、世界中の若い芸術家たちを惹きつけていました。「エコール・ドパリ」と呼ばれる画家たちは、そうしたモンパルナスの自由な雰囲気と芸術的な交わりに憧れて、多くは外国からパリに移住してきた異邦人画家たちでした。(中略)
本展では、当館所蔵のフランス近代絵画コレクションより、第1次世界大戦前後のパリで活躍したエコール・ド・パリの画家たち、モディリアーニ、キスリング、藤田嗣治、シャガール、ユトリロ、マリー・ロランサン、ピカソなどの作品を展示し、芸術都市パリがもっとも華やいだ時代のフランス美術の魅力をご紹介するものです。
今橋映子先生の授業の一環として、松岡美術館の『エコール・ド・パリ展』を見てきた。ここは白金台にあるこじんまりとした美術館なんだけど、西洋近代絵画から日本画・アジアの文物・オリエントや地中海の古代遺物・現代彫刻など、本当に幅広い分野の美術品が収集されていて面白かった。…あと、お庭がかわいかったな。鶴の置物がいたりして。
私には、風景画よりも人物画、更に、男性より女性を描いた作品に注目してしまう癖がある。今回も、パステル調のきれいな色を使って黒目の大きな独自の女性を描くマリー・ローランサン(参考)や、緑色の陰を入れるなどフォービズムの影響を感じる色使いで官能的な女性を描くヴァン・ドンゲンに長い時間、魅入ってしまった。他には、モーリス・ド・ブラマンクの重厚な色彩と荒々しい筆致で港や森を描いた絵や、ジョルジュ・ルオーの太い線や緑(ビリジアン)の使い方が印象に残っている。
エコール・ド・パリというのは、戦間期のパリで活躍した画家達というくらいのくくりだ。印象派のような区分と違い、作風や技法でまとめられたグループではなく、各画家がバラバラの個性を発揮している。その競演を目の当たりにしただけに、絵というのは、描かれている対象以上に、画家のまなざしを表しているんだとつくづく思った。
展覧会を見た後は、今橋先生にランチをご馳走になる。目黒駅前のLa belle pluieという可愛いカフェで。普段なかなか目黒には来ないので、たまたま来た今日、こんな素敵なお店を見つけたのは収穫だった。
夢をかなえる勉強法
- 作者: 伊藤真
- 出版社/メーカー: サンマーク出版
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 単行本
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一時間位で読める。「へぇ〜」と思うようなアイデアも多くて面白かった。
例えば、彼の主宰する法曹養成塾「伊藤塾」では、授業初日に合格体験記を書かせるらしい。合格した場面を想像することは、ゴールのイメージトレーニングをすることに他ならない。ゴールをはっきり見ることで、そこに向かっていく自分のイメージを落ち着いてとらえることができ、自分の現実とゴールとのズレに、うまくチューニングした合理的な勉強ができるのだ。
具体的に実践しようと思ったのは、書籍の目次ページのコピーを使った勉強法。全体像を確認・把握しながら勉強することは、ひとつひとつの知識を有機的に結び付けて体系化することに繋がり、効率の良い合理的な勉強法だという。
あと、印象に残ったのは、スランプというのは、邁進するが故に視野が狭くなって、自分の周囲の小さな世界やひとつの価値観にこだわってしまい、その範疇での自分の失敗ばかりに目をやってしまう状態だという話だ。そこで、世界の広がりを感じるために、東京タワーのような高いところから街を見たり、世界史の年表を眺めてみたり、他人の行動を観察して色々な生き方があることを実感してみたりすると良いらしい。
以下に、印象に残ったフレーズを紹介しておく。
- 能力×気力×勉強法。
- 自己満足こそが人を成長させる原動力。
- 本質を一言で言えないのは、わかっていない証拠。
- 部分の失敗を全体に広げない、一時の失敗を永遠なものと思わない。
- 人生の目標は何か? それはなぜか? そのために何をしているのか?